南獄4.1

憧れの米国駐在第2章

キャッチャー・イン・ザ・ライ(J.D.サリンジャー/村上春樹)

今年初めに原作者が亡くなったニュースを目にして、ああ近いうちに読みたいなぁと思っていた。
幼い頃からその存在だけは知っていたが、なぜか手に取ってページをめくるまでには至らなかった。
ジョンレノン暗殺犯人が愛読していたとか、
発表当時若者達から熱狂的に支持された一方で、危険な内容であるとして発禁処分になったとか、
興味をそそる周辺情報が豊富であったものの、作品自体があまりに有名であったことが、
かえって本書を手に取ることを遠ざけていたのかもしれない。
ところが残念ながら、そんな期待に反して、本書が私の内面に入り込んでくることは特になかった。
それは私に、本書を理解するだけの文学的素養や彼の地の歴史的背景を持ち合わせていなかっただけの話かもしれない。
しかしながらただ一つだけ、大昔の記憶で思い起こさせてくれたことがある。
それは大学生の頃、小中高と一緒だった友人と二人で中国を旅行していたときの、
丸二日間かけた電車での移動中、することもなくただ他愛もない会話をしていたときの彼の一言。
「おまえはなんていうか…、落ち着いてきたな。高校以前はすべてに対して怒っていたというか、
 許さないというか、良く言えばそれがおまえの、前に進む原動力だったように思う」
そのころの感受性で本書を読んだら、受け止めたものもまた違ったのかもしれない。
読むべきだったのか、読まなくて正解だったのか、今となっては分からないが。